2018年11月6日火曜日

第23回 国際浮世絵学会 秋季大会のお知らせ


23回 国際浮世絵学会 秋季大会
  大会テーマ 「 名所絵・地図・地誌」
  日 時 201812月1日(土)・2日(日)
  会 場  國學院大學 渋谷キャンパス  
        (東京都渋谷区東4-10-28
当学会以外の方もご参加いただけます。事前予約は不要です。
当日、大会の受付へお越しください。

  ●【参加費】(2日間共通) 
    国際浮世絵学会員:1,000円 一般:2,000円 学生:500

12月1日(土) 会場:130周年記念5号館2階 5202教室 
            総合司会:日野原健司(太田記念美術館・国際委員会委員長)
1230 理事会  【会場:130周年記念5号館3階 5302教室】
1330 開会の辞         小林 忠(国際浮世絵学会会長・岡田美術館館長)
    理事長挨拶        浅野 秀剛(国際浮世絵学会理事長・大和文華館館長)
1345 研究発表①            司会: 藤澤 紫(國學院大學)
       「鳥文斎栄之の肉筆画における署名使用に関して」
                     染谷 美穂(しもだて美術館)
1430 研究発表②            司会: 藤澤 紫(國學院大學)   
       「歌川国芳の美人画表現―歌川国貞との比較を通して―」
                     中澤 麻衣(中山道広重美術館)
1515 コーヒーブレイク
1545 研究発表③            司会: 内藤 正人(慶應義塾大学)
       「明治期の小原古邨」
                     小池 満紀子(川崎・砂子の里資料館)
1640 基調講演①            司会: 内藤 正人(慶應義塾大学)
       「明治期における歴史の視覚化」
                     アレン・ホックリー(ダートマス大学)
1800 懇親会 会場:若木タワー18階 有栖川宮記念ホール



12月2日(日) 会場:百周年記念館4階 「百周年記念講堂」 
1000 研究発表④            司会:武藤 純子(清泉女子大学)
       「幕末百人一首錦絵における名所図会の影響―歌川国芳の『百人一首之内』を中心に―」
                     フランク・ウィットカム(ライデン大学)
1045 研究発表⑤            司会:武藤 純子(清泉女子大学)    
       「浮世絵師が写した地図、描いた地図
           ―宮川長春画《歴代分野之図古今人物事跡》をめぐって―」
                     青木 隆幸(海の見える杜美術館)
1130 休憩
1300 基調講演②            司会:小林ふみ子(法政大学)
       「十七世紀後半における地図と浮世絵による空間の娯楽化」
                     ラドゥ・レカ(ハイデルベルグ大学)
1350 コーヒーブレイク
1420 シンポジウム「地図、地誌から浮世絵を読み解く」 
                     司会: 岡崎 礼奈(東洋文庫)
                   パネリスト: 赤木 美智(太田記念美術館)
                       桑山 童奈(神奈川県立歴史博物館)
                       杉本 史子(東京大学史料編纂所)
                       ラドゥ・レカ(ハイデルベルグ大学)
1730 閉会の辞          日野原健司(太田記念美術館・国際委員会委員長)

2018年8月29日水曜日

秋季大会 研究発表者募集のお知らせ


23回国際浮世絵学会 秋季大会 
大会テーマ 「名所絵・地図・地誌」
201812月1日(土)、2日(日)

会場:國學院大學 渋谷キャンパス
 住所:〒150-8440 東京都渋谷区東4-10-28
アクセス:渋谷駅(JR山手線・地下鉄・京王井の頭線・東急各線)から徒歩約13
渋谷駅(JR埼京線)新南口から徒歩約10

研究発表者募集のお知らせ

  2018121日(土)、2日(日)の2日間にわたり、第23回国際浮世絵学会 秋季大会を開催いたします。つきましては、研究発表者を募集いたします。発表の内容は、浮世絵全般に関わるものであれば、どのような切り口でも結構です。

なお、今回の大会テーマは、「名所絵・地図・地誌」とし、名所絵と地図、地誌との関わりを考えるシンポジウムを開催いたします。名所絵に関する発表はもちろん、名所絵と地図、地誌との関連、あるいは、地図や地誌の出版状況など、大会テーマと関わりのある発表を特に歓迎いたします。下記応募要領にしたがって奮ってお申し込みください。 

 [応募要領]1.研究発表の申し込み資格は、本学会会員であり、2018年度会費を納入済みであること。2.研究発表の内容は、浮世絵全般に関わるものであり、特に上記大会テーマに関わるものを歓迎します。ただし、未発表のものに限ります。なお応募締切の後、国際委員会にて選考し、発表の採否を本人宛にご連絡いたします。3.募集する発表者は6名程度。発表時間は130分以内、質疑応答10分、あわせて40分とします(時間厳守)。4.発表希望者は、氏名・所属(学生は学校および学部名)・住所・電話番号・メールアドレス・発表タイトル(日本語および英語)を明記した申請書(書式は自由)に、発表要旨(8001000字程度)を添え、国際浮世絵学会国際委員会まで郵送、またはE-mailにてご応募ください。
※お送りいただいた発表要旨は、採用決定後、大会冊子にそのまま掲載いたします。

[送付先]               国際浮世絵学会 国際委員会
※を@に変えてメールをお送りください。

住所:〒104-0031 東京都中央区京橋2-12-2 京橋三貴ビル4F
Tel03-6271-0824 Fax03-6271-0834

5.発表は原則として日本語でおこなわれるものとしますが、それ以外の言語による発表をご希望の方は、あらかじめ国際委員会までご連絡ください。

応募締切:2018917(月・祝)必着

2018年5月9日水曜日

第20回 国際浮世絵学会 春季大会のお知らせ

第20回 国際浮世絵学会 春季大会

2018年6月10日(日)
法政大学 外濠校舎5階S505教室
(東京都千代田区富士見2-17-1) JR・地下鉄市ヶ谷駅または飯田橋駅より徒歩10分
どなたでもご参加いただけます。

9;50 受付開始
10:20-10:30 開会の辞 小林 忠 会長
 浅野秀剛 理事長

午前・研究発表    司会)大久保純一
10:30-11:10 「文政期前後の山水名所題絵入狂歌本の出版とその改題・再印
          -浮世絵風景画流行の前史として-」
         Publication and Republication of Kyôka Books 
         with Landscape Illustrations in 1820s
         : Prehistory of the Landscape Prints Boom in 1830s
                             小林ふみ子(法政大学)
11:10‐11:50 「三代豊国の謎を解く-書簡という鍵-」
           Solve the mystery of SanndaiToyokuni
                             神谷勝広(同志社大学)

11:50-12:50   昼食休憩(第40回理事会)S502教室

12:50-13:30   第20回通常総会             司会)田辺昌子

午後・研究発表                       司会)桑山童奈
13:40-14:20  「西南戦争の文化史的側面-
           西南戦争錦絵および諷刺画の多様性 -」
           Cultural History of Satsuma Rebellion 
                           高橋未来(立教大学大学院)
14:20-15:00 「肉筆浮世絵の裏彩色技法をめぐる史的考察」
           A Historical Study of Urazaishiki (Reverse Coloring)
            in Ukiyo-e Paintings
                             廣海伸彦(出光美術館)

15:10‐15:20 第12回国際浮世絵学会賞授賞式     司会)加藤陽介
学会賞受賞者:藤澤紫氏、山尾剛氏
選考経緯ならびに国際浮世絵学会賞授与     小林 忠 会長

第12回国際浮世絵学会賞受賞記念講演
15:30-15:50 「雑談」                                      山尾剛氏(美術店 絵草子)
15:50-16:30    「愛される「美人画」―暮らしとメディア文化―」
                             藤澤紫氏(国學院大學)

17:00- 懇親会        司会)村瀬可奈・西田亜未
会場:市ヶ谷GRATOR(総武線市ヶ谷駅より徒歩3分)
        千代田区九段北4-3-14 市ヶ谷グラスゲート 1F



【大会参加費】 会員は無料です。受付で本年度の会員証をご提示下さい。
        一般の方も歓迎いたします。事前予約不要です。
        当日受付へお越しください。一般\1,000、学生\500
【懇親会参加費】国際浮世絵学会 会員\5,000、一般\6,000、学生一律\3,000







【研究発表要旨】

文政期前後の山水名所題絵入狂歌本の出版とその改題・再印
―浮世絵風景画流行の前史として―
 Publication and Republication of Kyôka Books with Landscape Illustrations in 1820s
: Prehistory of the Landscape Prints Boom in 1830s
小林ふみ子(法政大学)

北斎や広重に代表される天保期の風景版画ブームを先取りするものとして、文政期に風景画を挿絵とする絵入狂歌本やその板木を利用した絵本の出版が盛んに行われた。もちろん墨摺のものもあるが、色板を数枚用い、なかには空摺などの技法も駆使した美麗な本も出されている。岳亭定岡画の『山水寄観狂歌集』(文政3-6年頃刊)が『一老画譜』に作り替えられたことは比較的よく知られた例であるが、他にも北渓画『狂歌扶桑名所図会』(文政7年刊)が4度の改題を経て微妙に摺りに手を加えながら出版され続けたことは、その最たる例といえる。そのことは、風景画を挿絵とする狂歌本・絵本に十分な需要があったということを示す。保永堂版東海道五拾三次の序文が狂歌判者四方滝水米人の手にかかることを考えると、風景版画の出版にあたって版元が狙った購買者層は、こうした全国の狂歌師たちであったのではないかという推測が可能になる。
狂歌に詠まれて描かれた風景には、名所や宿場など特定の場所も少なくないが、名もない山河が多く対象になり始めるのもこの時期のことである。その背景には、18世紀後半に発達した文人趣味において山水を描き、詩に詠むことが、観念の世界だけでなく、現実に山地や郊外を遊歴する行為とつながったことがあろう。この時期に狂歌も漢詩もともに享受者層が地域的にも階層的にも拡大し、そこには当然、交渉や影響関係がある。広重の風景画に文人趣味が底流することが近時論じられたが(佐々木守俊「広重の中国趣味」『美術フォーラム』34号 2016年)、それは漢詩人たちとも交わり、ときに重なり合った狂歌師たちの要請にも適うものであった。風景はこうしたフィルターを通すことで、いわば文雅の世界に昇華され目に見える以上の価値を帯びることになることに言及したい。


「三代豊国の謎を解く―書簡という鍵―」
Solve the mystery of SanndaiToyokuni
神谷勝広(同志社大学)

 三代歌川豊国(1786~1864)は、初代豊国の門に入り、国貞と号し、天保15年(1844)、五十九歳で豊国を襲名する。大久保純一「歌川国貞の画業」(『別冊太陽国貞の春画』、平凡社、2018年)では、三代豊国は晩年「気力・体力の衰えを」嘆きつつも「錦絵揃物を多数」「円熟し」「かつ緊張感をもった筆致で描き上げた」とする。ここに疑義を感じる。気力・体力が衰退する中、なぜあれほど高い水準で大量の作品を生み出せたのか。
 その謎を解く鍵は、従来未紹介の書簡に存在した。版元広岡屋幸助宛三代豊国書簡1通(早稲田大学図書館蔵)、弟子国明宛三代豊国書簡7通(同志社大学図書館蔵)、顧客川喜田石水宛二代国貞書簡1通(石水博物館蔵)を取り上げる。それらから、➀三代豊国は彫師(特に彫竹)を信頼していたこと、②国明が三代豊国を支えていたこと、③富裕な顧客を持っていたこと、などが判明する。個人として衰えを感じつつも、秀逸な作品を多数生み出しえたのは、優れた弟子や彫師などを身近に揃えていたことによろう。三代豊国は、関係者を含めた総合力によって高い水準で大仕事を成し遂げていたのである。もちろん総合力を維持するには、経費がかかる。したがって富裕な顧客の確保も不可欠といえる。そのような顧客へもきちんと対応していたことがうかがえる。
浮世絵に絡む多様な事柄―版元とのやり取り・彫師へのこだわり・弟子の協力・顧客への対応など―にも目を向けることで、浮世絵への理解は一層深まるのではないか。

西南戦争の文化史的側面-西南戦争錦絵および諷刺画の多様性―
Cultural History of Satsuma Rebellion
高橋未来(立教大学大学院)

明治維新から十年という節目に勃発した西南戦争は、誕生から間もない日刊新聞を報道面・販売面などにおいて大きく成長させた。特に東京では大新聞・小新聞が連日戦争の状況を報道しており、その新聞報道を情報源として錦絵、錦絵新聞、草双紙や読本といった書籍類、激戦地を順位付けした番付表など、多様な出版物が出回ることとなった。また報道を下敷きにした講談や説教の流行、西郷らの偽写真、果ては西郷鍋や西郷糖といった便乗商品が登場するなど、“西南戦争もの”の流行は戦地から遠く離れた大都市の人々の生活や文化にも多大な影響を与えていた。
このうち特に錦絵には大判三枚続の判型で大新聞の戦争報道を引用し、西郷ら薩軍諸将の活躍を武者絵のように描いたもの、小新聞の投書欄などに取材し簡易な絵で戦争を茶化して描いたものなど、着想源や表現方法を異にする様々な作品があり、多くの史料が残存している。報告者は全国の所蔵館で行った史料調査で約600種の錦絵を確認し、前者のものを「戦報錦絵」、後者を「諷刺画」と分類するなど、西南戦争錦絵の多様性に着目しこれを近世近代移行期の情報文化に位置づけることを目的として研究を行っている。西南戦争錦絵は近代に入り誕生した新聞と不可分のものでありながら、近世の時事錦絵や戊辰戦争諷刺画の形を大部分で踏襲しており、ここに明治十年という時期の特色が見て取れるのである。
本報告ではこの西南戦争錦絵の様々な類型、及び七ヶ月半に及んだ戦争の中での錦絵の時期的変遷、新聞報道や芝居との関連、そして「西郷星」などの象徴的なテーマに関する典拠調査の結果を、明治初期の錦絵実証研究の一例として提示したいと考えている。


肉筆浮世絵の裏彩色技法をめぐる史的考察
A Historical Study of Urazaishiki (Reverse Coloring) in Ukiyo-e Paintings
廣海伸彦(出光美術館)

文化財の修理はいかなる場合も、作品の損傷をできるだけ緩和し、将来的にそれが進行・拡大するリスクを抑えることを目的として行なわれるが、作業の過程で得られる知見に美術史研究者が学ぶことも多い。この発表では、いくつかの肉筆浮世絵の修理を通じて明らかになった裏彩色技法の実例を報告し、あわせてその機能や意味の質的な変容を問う。
裏彩色の手法は、古代・中世の仏画や肖像画で頻繁に使用されていたことがよく知られるが、近世になって廃れたわけではない。例えば、土佐光起(1617-91)が『本朝画法大伝』(1690年)に筆録し、渡邉崋山(1793-1841)と椿椿山(1801-54)が「襯背」という語をもちいて人物画論を交わしたように、この伝統的な技法は流派を越えて江戸時代の画家たちに認知されたと思しい。浮世絵師も例外ではなく、窪俊満(1757-1820)の『画鵠』(1783年)には、裏彩色をめぐる同様の理解が示されている。
この知識が一定の浮世絵師たちのあいだで共有・継承され、実践に移されたらしいことは、すでにターニャ・ウエダ「肉筆浮世絵の裏彩色」(『國華』第1377号、2010年)などでうかがうことができる。先学が報告するのは、18世紀後半から19世紀に活躍した浮世絵師たちの事例だが、彼らに先立つ画家たちがこの手法に無知だったわけではない。ここでは、新たに菱川師宣(?-1694)などの使用例を紹介しつつ、時代間の機能的な差異や傾向について仮説を述べる。すなわち、単色で均質な賦彩を裏面に重ねた前代の画家たちに対し、描かれた対象の真に迫るべく、裏彩色にきわめて複雑な技巧を凝らしてみせたのが、勝川春章(1743-92)や葛飾北斎(1760-1849)とその門下の画家たちではなかろうか。
端的にいって、肉筆浮世絵の裏彩色技法をめぐって18世紀後半に起こったのは、実用から表現への転換というべき変化である。その具体相を探る試みは、この重要な画期に立ち会ったはずの春章について、あらためてその意義を強調することにもなるだろう。